空き家問題が、いよいよ税制面から本格的に動き出しました。
2025年度の税制改正では、放置された空き家への課税強化が盛り込まれ、「特定空き家」の認定が拡大されます。
これにより、相続放棄後の“誰も管理しない家”が全国的に増加する見通しです。
遺品整理業者は、まさにその最前線に立つ存在となります。
■放置された空き家が招く社会問題
空き家は見た目の老朽化だけでなく、防災・衛生・治安など様々なリスクをもたらします。
台風で屋根が飛ぶ、雑草が繁茂する、害虫が発生する、放火の対象になる——。
こうしたトラブルの対応に追われる自治体が急増しています。
一方で、所有者が亡くなり、相続人も管理できずに放置されるケースが後を絶ちません。
「相続放棄をしたから関係ない」と思っていても、実際には家財や残置物が残されたままの状態では、最終的に誰かが片づける責任が生じます。
■課税強化のポイントと業界への影響
2025年改正で注目されているのが、「特定空き家」指定の対象拡大です。
自治体が危険と判断した建物に対しては、固定資産税の軽減措置(1/6減額)が解除され、最大で税額が6倍になる可能性があります。
その結果、「税金が高くなる前に処分したい」という相談が急増することが予想されます。
遺品整理業者にとっては、空き家整理・残置物撤去・解体前清掃といった新しいニーズが拡大するタイミングです。
また、行政との連携による「空き家整理協定」の締結も、今後ますます重要になります。
■相続放棄後の“宙ぶらりん”状態に注意
相続放棄を行うと、所有権も放棄されるため、管理義務がなくなるように思われがちです。
しかし、放棄後に誰も名義を引き取らない場合、物件は“管理不在”の状態となり、実質的に地域が被害を受けるケースも。
自治体によっては、遺品整理業者に行政代行型の整理依頼が入ることもあります。
このため、業者側も法的知識を持ち、
所有者不明土地の扱い
自治体への報告義務
解体・処分時の許可手続き
を理解しておくことが求められます。
■「家を片づけてから売る」時代へ
従来は、不動産業者が販売前に残置物を処分するケースが多く見られましたが、近年は「家財整理をしてから査定へ」という流れが一般化。
遺品整理業者が不動産会社・司法書士・解体業者とチームを組み、ワンストップサービス化が進んでいます。
この動きにより、整理業者は「清掃業」ではなく「資産再生業」としての役割を持つようになっています。
税制改正を機に、空き家対応は今後の業界成長の大きな柱になるでしょう。
■NRAが提唱する「公正な整理と地域連携」
全国遺品整理業協会(NRA)では、空き家課税強化をチャンスと捉え、
行政との連携による整理協定モデルの構築
法務・税務知識を持つ認定講習
空き家対策専門部会の設立
を進めるアドバイスも行なっています。
「空き家を片づける」ことは、地域の景観と安全を守る行為でもあります。
課税強化は、業者が社会に貢献するための新しい入り口。
時代に合った法的リテラシーを持ち、誠実な対応を続けることが、これからの信頼構築につながります。
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