遺品整理の現場は、非常にデリケートな空間です。遺族の感情に深く関わるうえ、財産や思い出の品を扱うため、ちょっとした行き違いがトラブルに発展するリスクもあります。
本記事では、実際に多く報告されている「遺品整理業務におけるトラブル事例」と、それに対する予防策・解決策を紹介します。
1. 貴重品・重要書類の紛失
トラブル例:
「作業中に見つかったはずの通帳や印鑑が見つからない」「アルバムが廃棄されてしまった」
原因:
作業前の確認不足
現場スタッフ間の情報共有ミス
分別ルールの曖昧さ
解決策:
作業前に**「残してほしいものリスト」**を家族と明確に取り交わす
貴重品・重要書類・思い出品は仕分けシートで管理し、写真付きで記録
協会が推奨する「遺品仕分けフロー」をチーム内で標準化する
2. 追加料金トラブル
トラブル例:
「見積りより高額な請求をされた」「当日になって“これは別料金”と言われた」
原因:
初回見積もりが不十分(現地確認なし)
作業範囲・条件の事前説明が不足
記録に残さない口頭合意のみで進行
解決策:
必ず現地見積もりを実施し、写真付きの作業内容書を作成
不明点があれば、追加料金の可能性を事前に説明し、書面で確認
NRA協会が提供する「見積りテンプレート」「契約書式」を活用し、書面化を徹底
3. 近隣とのトラブル
トラブル例:
「騒音・搬出作業での通行妨害」「共用部分の汚れによるクレーム」
原因:
作業日・時間・車両の案内が不足
近隣住民への配慮が不十分
搬出ルートの確認不足
解決策:
作業前に管理人や隣接住民への挨拶・告知を徹底
マンションの場合は、養生の徹底・作業員の靴下交換など細やかな配慮を行う
NRAで共有されている「近隣配布用の案内チラシテンプレート」を活用するのも有効
4. 感情面のトラブル(クレーム)
トラブル例:
「勝手に捨てられた」「扱いが雑だった」「遺族への配慮がない」
原因:
スタッフの言動や態度
遺族の心情への理解不足
マニュアル通りに進めたが“心がこもっていない”と感じられてしまった
解決策:
スタッフにグリーフケアや傾聴の基礎研修を実施
作業時に一言「お気持ちお察しします」などの声かけを心がける
故人の品を扱う際は「手袋の着用」や「一礼」をルール化し、見える形の配慮を
5. 契約不履行・無断キャンセル
トラブル例:
「当日キャンセルされた」「代金の未払いが発生」
原因:
契約の取り交わしが曖昧(口約束)
キャンセル規定がなかった
支払い方法が不明確
解決策:
必ず書面での契約書を交わす(電子でも可)
キャンセルポリシー・支払い期日を明記
NRA協会が提供する「契約書ひな形」「キャンセル規定フォーマット」を活用
6. 相続関連のトラブルに巻き込まれる
トラブル例:
「相続人の1人から依頼を受けたが、他の親族と揉めた」「勝手に処分されたと訴えられた」
原因:
誰が正式な依頼者か不明
親族間での合意が不十分
法的トラブルに発展するリスクの見極めが甘い
解決策:
必ず“正式な依頼者”の身分証と委任状の確認を行う
相続人が複数いる場合は「全員の同意書」または「代表者の委任状」を取得
法的に不安のある案件は、行政書士や司法書士との連携を行う
まとめ:トラブルは“防ぐ体制”がカギ
遺品整理業務は、ただの作業ではなく「人と心に向き合う仕事」です。トラブルの多くは、最初の段階での確認不足・説明不足・共感不足から起きています。
全国遺品整理業協会(NRA)では、会員事業者が安心して業務を行えるよう、
契約書式や見積書テンプレート
クレーム対応マニュアル
グリーフケア研修動画
などの各種サポートツールを提供しています。
ぜひこうした仕組みを活用し、「トラブルが起きない仕組みづくり」を徹底しましょう。
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