遺品整理業界では、「クレーム=作業が雑」「清掃が下手」といった技術的な問題が原因だと思われがちです。しかし、実際に現場で発生しているトラブルの多くは、技術不足ではなく知識不足によって引き起こされています。
どれだけ丁寧に作業していても、法律・相続・感情への理解が欠けていれば、遺族との信頼関係は一瞬で崩れてしまいます。
本記事では、遺品整理業者がクレームになりやすい本当の理由と、その背景にある「知識不足」の正体について解説します。
技術があってもクレームは防げない理由
遺品整理の作業自体は、仕分け・搬出・清掃といった物理的な工程が中心です。経験を積めば、作業スピードや段取りは自然と向上します。
しかし、クレームの多くは作業の出来栄えそのものではなく、次のような点で発生します。
・勝手に捨てられたと感じた
・説明が不十分だった
・後から相続人が現れた
・法律的に問題があると言われた
これらはすべて、「知識」と「判断基準」の不足が原因です。
知識不足① 相続に関する理解不足
遺品は、法的には相続財産です。依頼者が「全部処分してほしい」と言っても、その人が処分権限を持つとは限りません。
相続人が複数いる場合、一人の判断で処分を進めると、後日ほかの相続人から
「なぜ勝手に捨てたのか」
「重要な書類がなくなっている」
といったクレームや法的トラブルに発展します。
業者が判断してはいけない場面で判断してしまうことが、最も多い失敗の一つです。
知識不足② 法律(廃棄物・古物)への理解不足
遺品整理では、廃棄物処理法や古物営業法が密接に関わります。
・一般廃棄物を業者が勝手に運ぶ
・許可なく遺品を買い取る
・リサイクル品を曖昧な形で転売する
これらは「知らなかった」では済まされません。
後から行政指導や通報につながり、依頼者にも不安を与える結果になります。
依頼者が不安を感じた瞬間、クレームは確定したも同然です。
知識不足③ 感情への理解不足
遺品整理の現場にいる遺族は、冷静な判断ができる状態ではありません。
作業中は「処分してください」と言っていた物でも、後になって
「やっぱり残したかった」
「一言相談してほしかった」
と感情が変化することは珍しくありません。
このとき、業者側が
「言われた通りにやりました」
と正論をぶつけても、火に油を注ぐだけです。
遺品整理に必要なのは、感情が揺れることを前提とした説明力と確認力です。
クレームを生む典型的なパターン
知識不足の業者ほど、次の行動を取りがちです。
・その場の判断で処分を進める
・書面や記録を残さない
・善意でアドバイスをする
・相続や法律に踏み込んだ説明をする
これらは一見、親切に見えます。しかし結果として
「業者に言われたからそうした」
という責任転嫁を生み、クレームの原因になります。
プロとして求められるのは「判断しない力」
遺品整理業者に必要なのは、すべてを決める力ではありません。
むしろ重要なのは、
・判断は遺族に委ねる
・選択肢とリスクを説明する
・迷う物は保留にする
・必ず記録を残す
という判断しないための知識です。
この姿勢がある業者ほど、クレームは激減します。
まとめ:クレームの正体は「無知への不安」
遺品整理業者に寄せられるクレームの多くは、作業の下手さではありません。
「この業者は本当に大丈夫なのか」
という依頼者の不安が、知識不足によって増幅した結果です。
遺品整理は、モノを扱う仕事ではなく、法律・相続・感情という見えないリスクを扱う仕事です。
だからこそ、技術よりも先に、学ぶべきものがあります。
これから遺品整理業に関わる人、すでに現場に立っている人こそ、
「クレームは知識で防げる」
という事実を、ぜひ知っておいていただきたいと思います。
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