「“看取り難民”時代の幕開け」 誰も看取られず亡くなる人の増加と業者の役割

近年、日本社会は静かに、しかし確実に「看取り難民時代」へ突入しています。
それは、家族や医療機関に看取られずに亡くなる人が増え、死の現場を支える仕組みが追いついていない現実を指しています。
超高齢化と単身化、地域のつながりの希薄化が進む中で、「最期をどう迎えるか」という問題は、もはや個人や家庭だけでなく、社会全体の課題となっています。

こうした中で、現場の最前線に立っているのが遺品整理業者です。
「誰も看取られなかった」その後を支える存在として、私たちの役割は年々大きくなってきています。

■ 看取り難民とは何か ― 増え続ける“独りの最期”

厚生労働省の調査によりますと、2024年時点で日本の年間死亡者数は約160万人を超えており、そのうち半数近くが病院外で亡くなっています。
在宅死・孤独死・高齢者施設での看取りなど、多様な「最期のかたち」が増える一方で、誰にも看取られずに亡くなるケースが急増しています。

特に深刻なのが「独居高齢者の増加」です。
総務省の統計によれば、単身高齢者世帯はこの10年で約1.5倍に増加しました。
男性では3人に1人、女性では2人に1人が一人暮らしという時代に突入しています。
配偶者や家族との死別、子どもとの関係の疎遠化、経済的理由などから、誰にも頼れないまま人生を閉じる人が増えているのです。

このような状況を指して、医療現場やメディアでは「看取り難民」という言葉が使われるようになりました。
つまり、最期の時間を共に過ごす相手も場所も見つけられない人々のことです。

■ 現場が語るリアル ― 遺品整理業者の遭遇する“無縁の死”

全国遺品整理業協会(NRA)に寄せられる相談の中でも、「孤独死現場での遺品整理」は年々増加しています。
行政や警察、管理会社からの依頼で発見に至るケースも多く、現場の多くは数日から数週間、発見されずに放置されていることも少なくありません。

遺品整理業者の仕事は、単に部屋を片付けることではありません。
亡くなった方の人生の痕跡を丁寧にたどり、残された品々を整理し、遺族や関係者の心の整理を支える“終末期の社会的インフラ”でもあります。

しかし、「看取られなかった死」は、遺族のいないケースや、遺族が存在しても疎遠で連絡が取れないケースも多く、対応は年々複雑化しています。
そのため、行政との連携や、福祉・医療・司法など多領域との橋渡しを行う力が、遺品整理業者に求められるようになっています。

■ 社会の仕組みが追いつかない ― 「最期の居場所」の空白

看取り難民が増加している背景には、医療や介護の現場の限界があります。
病院では在院日数の短縮化が進み、長期入院による看取りが難しくなりました。
また、介護施設でも医療体制が整わず、「看取り対応」ができないケースが多く見られます。
結果的に、家に帰されても家族の支援が得られず、独居のまま亡くなる高齢者が増えているのです。

一方で、地域包括ケアや在宅医療の整備が進められてはいるものの、現実的には「医療・福祉・地域の隙間」に落ちてしまう人々が存在します。
“看取られる場所がない”という構造的な問題が、看取り難民を生んでいるのです。

■ 遺品整理業者に求められる新しい役割

全国遺品整理業協会(NRA)では、こうした社会的課題に対し、遺品整理業の在り方を再定義する動きを進めています。
もはや「片付ける業」ではなく、「生と死の橋渡しを担う業」へと変化しているのです。
単に遺品を処分するのではなく、行政や福祉、地域ネットワークと連携し、「孤独死予防」「地域見守り」「死後対応支援」までを包括的に支える体制づくりが求められています。

実際に、協会加盟企業の中には、地域包括支援センターや医療機関、葬儀社などと協定を結び、亡くなる前から支援に関わる事例も増えています。
「片付けのプロ」から「終活・看取り支援のプロ」へと役割が変わりつつあるのです。

さらに、AIやDXを活用した「デジタル遺品整理」や「事前データ登録」など、亡くなった後の混乱を防ぐ仕組みも進化しています。
特に高齢者のスマホやSNS内のデータ、ネット銀行・証券口座の管理など、従来の遺品整理では対応できなかった領域にも踏み込む動きが出てきています。
これは、今後の“看取り難民時代”における新たな社会インフラの一つになるでしょう。

■ 「看取る」文化を取り戻すために

かつて日本では、「看取り」は家族や地域の中で自然に行われていました。
縁側や居間で息を引き取る祖父母を、家族が囲んで見送る——そんな風景が日常だったのです。
しかし、核家族化と都市化によって、その文化は失われつつあります。

「誰かを看取る」「誰かに看取られる」ことは、命のつながりを感じる大切な行為です。
それを支える仕組みを社会全体で再構築することが、今求められています。

そのためには、行政だけでなく、民間事業者、地域住民、そして遺品整理業者が一体となった“共助のネットワーク”が必要です。
「亡くなる瞬間だけ」でなく、「亡くなる前」から「亡くなった後」までを一つのプロセスとして支えることが重要です。
この一貫した支援こそが、真の意味での“看取り社会”の実現につながるでしょう。

■ NRAとしての展望 ―「孤独死ゼロ社会」を目指して

全国遺品整理業協会(NRA)は、現場の声を集め、看取り難民問題に対する提言を続けています。
孤独死や無縁社会の現場に日々向き合う業者だからこそ、社会の歪みを最も近くで見ています。
だからこそ、業界全体として「死後対応」だけでなく、「生前支援」にも関わる仕組みを整えることが急務だと考えています。

今後は、自治体との協定による早期発見体制、デジタル遺品の統合管理、地域見守りアプリとの連携など、DXを活用した孤独死予防にも注力していく予定です。
“誰も看取られずに死ぬ社会”を、“誰かに見守られて生き抜く社会”へ。
それを支える現場の力が、今まさに問われているのです。

■ 終わりに ― 人の最期を、社会で支える時代へ

「看取り難民」という言葉は、決して他人事ではありません。
誰もが老い、やがて命を終えます。
その時、どんな最期を迎えたいか——その答えを社会全体で模索する時代が始まっています。

遺品整理業は、単なる後片付けの仕事ではなく、「人の最期に寄り添う仕事」へと進化しています。
全国遺品整理業協会は、その最前線で「命の尊厳」を守る活動を続けてまいります。

一般社団法人全国遺品整理業協会では遺品整理の古物商の知識を軸にノウハウ提供を行っています。
買取ノウハウ提供を通じ、信頼される遺品整理業界を創造することを目的とし、循環型環境社会の実現に貢献します。

会員の皆様にはNRAクラウドシステムをご提供し、システム内でコンテンツ研修をいつでも受けられる体制を整えております。
また、このシステムでは遺品整理の案件受付から作業報告までをすべて管理できる顧客管理システムとしてもご利用可能です。

多くの遺品整理業者様に安心して経営していただくことが、ご遺族への貢献につながると考えています。

是非、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
   

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